第5章 【毎年恒例】
「根拠は?」
「マルフォイって人、いつもハリーと張り合ってたから」
ルーナのその答えは、クリスの胸にストンと落っこちた。確かにこれ以上単純で、これ以上確信の持てる答えはないだろう。
ホグワーツに入ってから、ドラコは常にハリーと張り合ってきた。奇しくも今日と同じこのホグワーツ特急で喧嘩をして以来、ドラコは何かにつけてハリーを敵視してきた。
だがハリーが誰もが認める『選ばれし者』となった今では、いくら名高い純血一家の嫡男と言えどドラコなど完全に格下の存在だ。
そんなドラコが今一度ハリーに対抗しようと考えているならば……危険を冒して『死喰い人』になった可能性は高い。
だが、その危険とは一体なんだろう。それさえ解れば、ドラコを止める手立てが出来るのに――。
「クリス?」
「ヴォルデモートが、未成年を配下に加える条件って何だか考えられれるか?」
「え、マジで君までマルフォイが『死喰い人』だって言いたいの?」
「ルーナの言うとおり、あの馬鹿が調子こいてる理由の1つにはなる」
あの日『ボージン・アンド・バークス』での、あの大きな態度。そして2人きりの時に見せた余裕。考えれば考えるほど、ドラコが『死喰い人』である裏付に思えてくる。しかし、まだ決定打に欠ける。
それを考えているうちに、コンパートメントの扉が開いて、ネビルが戻ってきた。が、一緒に出て行ったはずのハリーの姿は無い。
「あれ?ハリーは?」
「まだスラグホーン先生につかまってるよ。なんだか……すっごく気に入られてるみたい」
「どんな先生だった?スラグホーンってのは」
「う~ん、自慢話が好きみたい。自分がいろんな有名人と仲が良いって話しをずっとしてたよ」
ネビルの説明を聞いて、クリスは合点がいった。何故自分とハリーとネビルがランチに招かれたのか、それは3人が魔法省の一件で有名になったからだ。
それにハリーは言わずもがな、クリスも『日刊預言者新聞』で連日名前が載っている。きっと有名人の卵を、自分の手元に置いておきたいのだろう。クリスはランチに行かなくて正解だったと確信した。