第4章 【闇払いごっこ】
「悪党の会話を盗み聞こうなんて、相当の悪だな」
「誉め言葉は後で聞かせて。とにかく今はマルフォイだ!」
店のドアの下から『伸び耳』を通し、4人はそれぞれ先端部分を耳に突っ込んだ。すると店主のボージンとドラコの声がダイレクトに聞こえてきた。
「――ハッキリ言ってもらおうか」
「例え若様が相手でも、品物を見てみない事にはお答えできません」
「御託はいい。直し方だけ教えろ」
「ですから、直すにもどこがどう壊れているのか分かりませんと……」
「……直すって、何を直す気だろう?」
「シー!静かに!」
ロンが余計な口をはさむと、ハーマイオニーが猫の威嚇の様な声を出した。だがロンの言う通り、わざわざおば様を撒いてまで、ドラコはボージンに何をさせようとしているのだろう。
「随分ごねるんだな。分かった、それならこれでどうだ?」
一瞬間があって、ボージンがひゅっと息をのむ音が聞こえた。それが何を意味しているのか分からなかったが、ドラコの声が一瞬愉快そうに笑って聞こえた。
長年の付き合いで分かる。これはドラコが調子に乗っている時の声だ。こういう時、ドラコは大抵碌な事を考えていない。
「もしこの件を誰かに漏らしたりしたら……どうなるかは分かるな?」
「はい、若様。ですが――」
「もちろん母上にも言うな。それと、あれも保管しておくのを忘れるな。後で僕が使う」
「……かしこまりました、若様」
ボージンのぼそぼそした声の後、来客用のベルが鳴った。どうやらドラコは店を出たみたいだ。クリスは耳から『伸び耳』の端を外し、3人に目配せした。
「マルフォイのやつ、何を考えてるんだろう?」
「分からないわ……だけど言える事は、マルフォイは2つ別々の何かを要求しているわ」
「――ちょっと待て、ドラコ……あいつ、どこに行くつもりだ?」
てっきり『ボージン・アンド・バークス』で用事を済ませたら、真っすぐダイアゴン横丁に戻ると思っていたクリスだったが、ドラコはそれとは反対の道を歩いて行ってしまった。
ここから先は、流石のクリスでさえ訪れた事の無い未知の通路だ。クリスは一瞬ためらったが、ドラコの姿を見失う前に、マントから出てドラコの後を追った。