第4章 【闇払いごっこ】
ゆっくりと、でも見失わないように慎重に一定の距離を取りながらドラコの後をつけて行く。
ドラコは時折後ろを振り返り、辺りを見回しなが『ノクターン横丁』へと入って行った。
……不味い、ここから先は流石のクリスでも躊躇う場所だ。闇の魔術が蔓延り、ヴォルデモート復活前でさえ危ないと言われ、1人で立ち入ることを禁じられていた。
しかし場所が場所なだけに、余計にドラコの行動を見逃すわけにはいかない。クリスはグッとこぶしを握ると、ドラコを見失う前に『ノクターン横丁』へのトンネルをくぐった。
どことなく陰湿な気配が辺りを漂う中、慎重にドラコの後をつけていくと、ドラコは迷わず『ボージン・アンド・バークス』の店に入っていった。
この店は前にも来たことがある。確か2年生の時、ルシウスおじ様に連れられて、ドラコと3人で訪れたのだ。
だが『ボージン・アンド・バークス』で、ドラコは何を買うつもりなんだろう。あの店は物騒で胡散臭い品物しか置いてないはずだ。
それに今のご時世、闇の魔術に関する物を買うだなんて、自ら犯罪者と言っているようなものだ。
クリスが注意深く店の中を覗いていると、誰かに肩を叩かれ、クリスは素早く振り返った。だが、そこには誰も居なかった。
おかしい、確かに誰かに肩を叩かれたような気がしたが――。そう思っていると、誰も居なかったはずの通路から、ハリーの生首が現れた。
クリスは一瞬大声を上げそうなったが、その口を咄嗟にハリーが塞いだ。どうやらハリーは透明マントを被っているらしい。
ドラコに見つかる前に、早くマントの中に隠れろと、切羽詰まった様子でハリーが声も出さずに言った。言われた通り透明マントの中に入ると、ロンとハーマイオニーも一緒に隠れていた。
「どうやら、考えは同じだったみたいだな」
「ねえ、マルフォイは何を考えているんだと思う?」
「それが分かれば苦労しない」
「あの店で、マルフォイは何をするつもりかしら?」
クリスの記憶が確かなら、『ボージン・アンド・バークス』の扉の上には来客を知らせるベルがあった。その所為で、透明マントがあっても店内に入る事は出来ない。
するとロンがポケットから、しなびた肌色のゴムの束を取り出した。これは――『伸び耳』だ。