第4章 【闇払いごっこ】
「私も初めて来たんだが、なかなかどうして。繁盛しているみたいじゃないか」
おじさんの言う通り、閑散としたダイアゴン横丁で、今客を集めているのはこの店だけだ。
フレッドとジョージの悪戯専門店、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ。通称『W・W・W』には、ホグワーツの生徒だけでなく、就学前の10歳前後の子供たちでにぎわっていた。
「ジニーはもう店の中にいるよ。あまり時間がない、皆も行っておいで」
おじさんは気楽に言ったが、店の中はぎゅうぎゅうで、商品棚には近づきたくても近づけないのが現状だった。
人をかき分けかき分けやっとのことで棚に近づくと、色々な悪戯グッズが所狭しと並んでいた。中には見た事のある物もあったし、新商品も並んでいた。
ハーマイオニーは『白昼夢呪文』にご執心だったが、あまりの人ごみに酔ったクリスは早々に店を出た。
「うん?クリス、もういいのか?」
「ああ、少し人ごみに酔って……そう言うハグリッドは入らないのか?」
「俺が入ったら、小せぇ子たちを踏みつぶしちまう」
そう言いながら、ハグリッドは楽しそうに笑った。確かにこの店は馬鹿らしさを前面に押し出している所為なのか、見ているだけでつい笑みがこぼれる。
いや、それだけではない。きっとそれ以上に店が笑顔であふれているからだ。こうやって楽しそうにしている人を見ているだけで、ついこちらまで頬が緩んでしまうから困る。
クリスが店外から楽しげな様子を眺めていたその時、店と店との細い路地の隙間から一瞬だけドラコの姿が見えた。
その後ナルシッサおば様の姿を見なかったことから、どうもドラコ1人らしい。
少し迷ったクリスだったが、ここは勝手知ったるダイアゴン横丁だ。小さい頃から庭としてきたクリスは危ない目に遭う事もないだろうと考え、ハグリッドに「ちょっとトイレ」と嘘をついてドラコの後をつけてみることにした。