第3章 【寂れたダイアゴン横丁】
この不機嫌そうなツンとした声は、何度も聞いた覚えがある。間違いなくドラコだ。
クリスはハリー達が止めるのも聞かず、スッと店の奥へ進んだ。するとついたての奥には円形の台の上でローブの採寸をしているドラコと、記憶よりはるかにやせ細ったナルシッサおば様の姿があった。
「おば様……お久しぶりです」
「……クリス、まさか――!?」
ナルシッサおば様がクリスに近づこうとしたその瞬間、黒いものが突然視界を遮ったかと思うと、シリウスが壁の様に立ちふさがっていた。
いつも見せている陽気な雰囲気は一切なく、その殺気をはらんだ力強さに圧倒されそうになった。
「シリウス・ブラックッ!」
「気軽に私の名前を呼ばないでもらおうか、マルフォイ。耳が腐る。それに私の可愛い子供たちにも近づかないでもらいたい」
「クリスは彼方のものではなくてよ!」
「そうか?だがお前のものでもあるまい」
両者の間でバチバチと火花が散っているのが見えるようだった。クリスはシリウスの大きな体の陰になりながら、こっそりドラコの様子を覗った。
ドラコは丸っきりクリスを無視して、採寸していたローブをマダム・マルキンに突っ返していた。
「行きましょう、母上。こんな穢れた血を客にするような店で、ローブを作る気はありません」
「ええ、そうしましょう。ですがその前に――クリス、少し話しがあります」
「先ほどの話しを聞いていなかったのか、マルフォイ?」
「わきまえなさい、シリウス・ブラック。たかが1、2年の付き合いしかない彼方に、15年以上家族として付き合ってきた私達の邪魔は出来ないわ。そうでしょう、クリス?」
有無を言わさぬナルシッサおば様の言葉に、シリウスは憎しみを露わにしていたが、クリスが「私からも頼む」と言うと、3分間という制限時間付きでついたての向こう側に消えた。
ドラコは話しを聞く気がないのか、壁に背をもたせ掛け、冷ややかな目で外を眺めている。
ナルシッサおば様はクリスを手近な椅子に座らせると、包み込むようにクリスを抱きしめた。