第3章 【寂れたダイアゴン横丁】
全員無事に漏れ鍋に集合すると、どういう順路で買い物するのか話し合った。その結果、効率を考えて2組に分かれる事になった。
クリス達4人はローブを新調するため、ハグリッドとシリウスと一緒にマダム・マルキンのお店へ。ジニーとウィーズリー夫妻は教科書を買いにフロ-リッシュ・アンド・ブロッツへ行くことになった。
「それじゃあ1時間後、フレッドとジョージのお店の前で落ち合おう」
「2人のお店ってどこにあるの?」
「なに、すぐに分かる」
ウィーズリーおじさんはそう言って、意味あり気な笑みを残して、先にダイアゴン横丁へ行ってしまった。
少し不安はあったが、時間が勿体なのでクリス達も気を取り直して、漏れ鍋の裏庭からダイアゴン横丁へ入った。
久しぶりのダイアゴン横丁は、すっかり様変わりしてしまっていた。どの店も人気がなく、閑散としていて、店の明かりが少ない所為かどこか薄暗い。また至る所に、未だ捕まっていない『死喰い人』のポスターが貼ってあった。
「早く店に行こう。ここもあまり安全とは言えない」
シリウスが先頭に立ち、一行はマダム・マルキンの店を目指した。その途中、路地の端に露店商が怪しげなお守りを売っているのを見た。
ノクターン横丁じゃあるまいし、こんないかにも不法で商品を売るような店、今までのダイアゴン横丁では見た事がなかった。
たった1人の魔法使いが復活しただけで、世界はこうも変わってしまうのかと思うと、ヴォルデモート復活を頑なに信じなかったファッジ元大臣の気持ちも少しは理解できる。
怪しげな露天商を無視し、無事マダム・マルキンの店の前まで来ると、しんがりを務めていたハグリッドがふと立ち止まった。
「俺は窓から見とる。俺が入ったら店がぎゅうぎゅうになっちまう」
「すまないな、ハグリッド。護衛は私に任せてくれ」
確かにあまり広くないこの店に、ハグリッドの巨体はいささか問題がある。シリウス、ハリー、ロン、クリス、ハーマイオニーの5人は、出入口でハグリッドと別れると店内に入った。
この店もいつもならホグワーツの制服を新調する子供でにぎわっているのに、漏れ鍋同様ガランとしていた。それでも先客がいたらしく、奥の方から声が聞こえてきた。
「――何度も言っていますが、母上。僕はもう子供じゃないんだ、買い物くらい1人で出来ます」