第3章 【寂れたダイアゴン横丁】
「ル、ルルルーピン先生。あ、あ、あの、何か心配事でもあるんですか?」
「ん?ああ……良くないニュースが山ほどあってね。イゴール・カルカロフを覚えているているだろう?魔法学校対抗試合のダームストラング校の校長だった。奴の死体が北の掘っ建て小屋で見つかったんだ。闇の印と共にね」
「そう……ですか」
「それに、杖職人のオリバンダーも居なくなった。店に荒らされた痕跡はなかったが、ヴォルデモートが復活してからというもの、あちこちでこんな騒ぎばかりだ」
ルーピン先生の話しを聞いて、折角のハリーの誕生日会がお通夜の様な空気になった。
シリウスが気を利かして馬鹿なジョークを言ったり、ワインを派手に飲んで大騒ぎしていたが、それでもみんなの胸の不安は晴れなかった。
そんな残念な誕生日の翌日、ホグワーツから新しい教科書リストが届いた。ロン、クリス、ハーマイオニーには通常通り教科書リストだけだったが、ハリーにはなんとクィディッチのキャプテンに選ばれたという手紙と、その証のバッジが同封してあった。
「これ、本物……だよね?」
「当ったり前だろ!?君がキャプテンじゃなきゃ、誰がキャプテンをやるんだよ!!」
「おめでとう、ハリー!」
「ヨカッタナ」
ロンとハーマイオニーは心からハリーのキャプテン就任を喜んだが、クリスだけはそうはいかなかった。クリスは冷めた視線で、あからさまに心の籠っていないセリフを吐いた。
それでもケチを付けなかっただけマシと言えよう。以前のクリスなら確実に鼻で笑っていただろうから。
ホグワーツから無事手紙が届いたのは良いが、問題は買い物だった。ヴォルデモートが復活してからというもの、あちこちに危険がはびこり、ウィーズリーおばさんは子供たちを、絶対に家の周りに張り巡らされた結界から出させなかった。
もちろんハリーやクリスの事を考えると、その方が絶対安全だし良い事なのだが、子供たちが買い物に行きたい理由は他にもあった。
それはフレッドとジョージの悪戯専門店、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ、通称『W・W・W』だ。
2人の店はダイアゴン横丁にあるのだが、子供たちはまだ誰もその店に訪れた事がない。1度で良いから行ってみたいと、ロンは常々口にしていた。