第3章 【寂れたダイアゴン横丁】
そう言ったクリスは、やや恥ずかしそうに視線を背けた。
日ごろから変に斜に構えて「勉強なんて暇人がすることだ」なんて言っていたのに、今更クソ真面目に勉強だなんてクリス自身ヘソで茶を沸かしたくなる。
だがハリーが自分の運命を受け入れた今、自分も現実から逃げるわけにはいかない。
確かに出生からすれば、自分は召喚術の正統な後継者とは言えないかもしれない。それでも自分の出来る事、自分にしか出来ないことをやってみたいという欲は、進路指導の時からあるにはあった。
あの時は、思い付き程度の気持ちしかなかったが、今その気持ちはしっかり固まっている。
折角打ち明けたというのに、何も言ってくれないハーマイオニーに、クリスは自嘲気味にため息をついた。
「ほらな、良いぞ。笑いたければ笑え」
「いえ、いいえっ!笑わないわ!それって素晴らしい考えよ!!」
「そこまで褒めるほどの事でもないけどな。結局、何を勉強して良いか分かってないんだから」
「でも、今勉強していることは必ず役に立つわ」
ハーマイオニーの目に、やる気と言う名の炎が灯ったように見えた。
それから2週間、ハーマイオニーの組んだスケジュールに沿ってみっちり勉強させられたのには、流石のクリスも弱音を吐きそうになってしまうほどだった。
* * *
7月30日の前夜、この日は勉強は無しで、翌日のハリーの誕生日の為にみんなで準備を行っていた。ウィーズリーおばさんは特大のケーキを焼いて、生クリームとチョコレートで素晴らしいデコレーションをしていた。
クリスとロンは少ないお金を2人で出し合って、ハニーデュークスの高級チョコレートボックスを買った。
もちろん他の皆もそれぞれプレゼントを用意したが、ハリーが1番喜んだのは他でもない。名付け親のシリウスが「隠れ穴」に招待されたことだった。
「やあ、ハリー!Happy Birthday!!」
「こんにちは、モリー。お邪魔するよ」
「シリウス!ルーピン先生!」
誕生日当日、シリウスはルーピン先生と一緒に「隠れ穴」にやって来た。シリウスは髪を切り、グリモールド・プレイスに居た頃よりさっぱりしていた。
大好きなルーピン先生はまた白髪が増え、ローブもよれよれで、苦労をしているのが垣間見えて、クリスは心配になって声をかけた。