第22章 【笑い合えるのであらば】
「クリス、起きてる?ちょっと良い?」
「傷心中で動けません」
「良いから、ちょっと!大事な事なのよ!!」
半ばハーマイオニーに無理やりベッドから引きはがされると、クリスはブツブツ文句を言いながら談話室に降りて行った。
そこにはハリーやロンの他に、グリフィンドール生がちらほら居るだけだった。
「……なんだか生徒が少なくないか?」
「当たり前だよ、殆どの生徒はダンブルドアが亡くなったって聞いて、親が迎えに来たんだから」
「成るほどな……。で?話しって何だ?」
「実は……ダンブルドアと取りに行った『分霊箱』だけど、偽物だったんだ」
この衝撃に、やっとクリスの失恋ショックが撃ち負かされた。
ハリーは人の少なくなった談話室の辺りをクセで見回すと、ポケットから小さく折りたたまれたメモを取り出した。メモにはこう書いてあった。
――闇の帝王へ――
貴方がこれを読む頃、私はこの世にはいないでしょう。しかしこんな私が、貴方の最大の秘密を発見したことを知って欲しいのです。本当の分霊箱は私が盗みました、出来る限り迅速に破壊するつもりです。
死を目前にした私が願うのは、貴方が強い相手とまみえた時、再び死に直面することです。
――R・A・B――
「……これは」
「手紙の内容はそれほど重要じゃないわ、問題は名前よ」
「R・A・B……いったい誰の事だと思う?」
「それが分かれば、苦労はしないさ」
どことなく、ハリーの言葉には自暴自棄の雰囲気があった。確かにダンブルドアと一緒に苦労して手に入れた『分霊箱』が偽物では、何も言う事の出来ないかもしれない。
不穏な空気が4人を包む。と、その時ハーマイオニーが遠慮がちに口を開いた。
「あのね……『半純血のプリンス』の事だけど、私、正体を見つけたの」
「僕も知ってるよ、スネイプだろ?」
「え!?何で知ってるの?」
「スネイプ本人が言ってた……「姿くらまし」で逃げる直前にね」
「じゃあ、ハーマイオニーは?」
「新聞の記事を見つけたの。例のアイリーン・プリンス、スネイプの母親だったみたい」