第22章 【笑い合えるのであらば】
「トンクス、何度も言うが君はまだ若い。私なんかよりも良い相手が沢山いる」
「そんなの関係ないわ!」
「リーマス、トンクスの言う通りよ。好きになれば、狼人間だろうが貧乏だろうが関係ないのよ」
その意見には全く持って同意したかったが、どういう訳かクリスの口は半開きのまま微動だにしてくれなかった。その間にも、ルーピン先生はウィーズリー夫妻とトンクスに説得され続けた。
「ばかげている……今は……ダンブルドアが亡くなったんだ」
「世の中に愛が増えた事を知ったら、ダンブルドアはお喜びになったと思うわ」
「そう言う事だリーマス、そろそろ年貢の納め時だぞ」
なんだか上手くまとめようとしているシリウスに、クリスは裏切られた気分だった。
しかしクリスがショックから立ち直る前に、涙で目を泣き腫らしたハグリッドが入ってきて、また医務室内の空気が変わってしまった。
「お、終わった……スプラウト先生は子供たちを寮に戻して、フリットウィック先生は、部屋でまだ休んでるが、すぐに良くなるって……スラグホーン先生が、魔法省に連絡を……」
「分かった、ありがとうハグリッド」
再び冷静さを取り戻したルーピン先生が即座に対応し、その場は解散の流れになった。
行く当てもないクリスは医務室を後にすると、ふらふらと女子寮に戻った。そしてベッドに潜り込むと、枕に顔を埋めてひたすら泣いた。
憧れのルーピン先生に、言い寄っている女がいるのは知っていたが、それがトンクスだったなんて。手放しで賛成は出来ないが、かと言って反対も出来ない。
大好きなルーピン先生が幸せな結婚をする。今更自分の出生を嘆く訳ではないが、やはりヴォルデモートの娘よりも、普通の女性の方が先生にはお似合いだと思う。それが明るくて愛想の良いトンクスなら尚更だ。
しかし4年間も恋焦がれてきたルーピン先生を、そんなに簡単に諦めることは出来ない。
そんなこんなで、結局翌日になってハーマイオニーが声をかけるまで、クリスはベッドの上から動こうとしなかった。