第22章 【笑い合えるのであらば】
「まさかビルがもう、私と結婚したくないと思いマスか!?」
「い、いいえ。でも……こんな顔になったあとじゃ……」
「こんな顔!?いいえ!ビルはもっとハンサムになりマシた!このキズは、私のダンナ様がだれよりも勇敢だという証拠デス!」
「だって、でも貴女は……」
「私のダンナ様は、世界で1ばん強くてカッコいいデス!!それだけで結婚するのは十分デス!!」
そう言うと、フラーはおばさんの手から軟膏を奪い取り、ビルの顔にたっぷりと塗りたくった。それを医務室に居た全員が呆けながら見ていた。
まさかあのフラー・デラクールが、人の外見より内面を取るなんて思わなかった。
十分沈黙した後、ウィーズリーおばさんが突然こんな事を言いだした。
「――リュミエール叔母さまが、ティアラを持っているの……ゴブリン製のよ。それを、貴女に……」
「……わたしに?」
「ええ、結婚式で付けて欲しいのよ。凄く美しいティアラで、きっと貴女にピッタリだわ」
「ありがとう、ございマス」
あまりに唐突で、これが感動的なのかどうなのかすら分からなかった子供たちだったが、ウィーズリーおばさんとフラーの肩を、両方から温かく包み込むウィーズリーおじさんの姿を見て、家族って凄いなと思わされた。
そして次の瞬間、更に凄いことが起こった。
「ほら、あの通りよ!リーマス!!」
泣きそうなくらい声を張り上げたトンクスが、ルーピン先生を見つめていた。
今度はなんだと思う反面、何か凄い嫌な予感がクリスの脳内を駆け巡っていた。
「フラーは例え噛まれたってビルと結婚したいの!私と同じよ!!どうして分かってくれないの!?」
「止めないか、トンクス。こんな所で……」
「いいえ止めないわ!貴方ってばいつも逃げてばっかりで、全然私の話を聞いてくれないじゃない!!例え狼人間だって、貧乏だって、私は貴方がいいのよ!貴方が好きなの!!」
その瞬間、クリスの脳裏にルーピン先生宅で聞いた女の声がこだました。
(まさか……まさか、あのルーピン先生に良い寄っていたのが、トンクスだったなんて……。)
あまりのショックに、クリスは腰を抜かして床にドスンと尻もちをついた。