第21章 【あの約束をもう一度】
「ペトリフィカス トタルス!」
クリスを担いでいた男が、突然バタンと倒れた。いったい誰が呪いをかけたのか確認しようと振り返ると、何故かそこには居なかったはずのハリーが立っていた。
「ハリー!?どうしてっ……?」
「コイツ、どこから現れたの!?」
「構うな!先に行け!!」
スネイプが階下に残っていた『死喰い人』達を先導し、一同は撤退を始めた。
ハリーはクリスの手足の縄を解くと、『死喰い人』達を……いや、スネイプを逃がさんと驚くべき速さで追いかけて行った。
一方のクリスは、まだ体力が万全ではなかったが、最後の最後の力を振り絞り螺旋階段を滑り下りた。
着いた先の廊下では、今だ激しい争いが繰り広げられていた。クリスは周囲に目を走らせ、ドラコの姿を探すと、スネイプと一緒に階段を下りて行くのを見つけた。
「待て!ドラコ!!」
クリスは出来る限り大きな声で叫んだが、この激しい混戦の中では殆ど意味をなさなかった。
どこの馬鹿か知らないが、『死の呪い』を無暗矢鱈に発射して、みんな運と感だけでそれを避けていた。クリスも何とかそれを避けて、ドラコを追った。
体力が底をつき、足がもつれて挫けそうになったが、クリスは懸命に足を動かした。
しかしそんなクリスの足では到底ドラコたちに追いつけるわけがない。それでも必死に足を止めずドラコを追うクリスの背後から、頼もしい吠え声が聞こえた来た。
「シリウス!!」
クマほどある大きな黒犬に変身したシリウスは、背中に乗れと言わんばかりにクリスに視線をやった。
クリスはシリウスに礼を言うと、サッと背中にまたがり、その黒い毛を手綱代わりにしっかり握った。