第21章 【あの約束をもう一度】
「ドラコ、馬鹿な真似は止せ。ダンブルドアに任せて、私と一緒に戻ろう」
「戻る?……戻るだって?……いったいどこに戻れって言うんだ!?」
突然癇癪をおこしたように、ドラコが叫んだ。
その顔色は夜空の中でもはっきりわかるほど蒼白で、ブルーグレイの瞳には狂気と混乱が垣間見えた。
「僕にはもう戻る場所なんかない!やらなければ殺される、それだけだ!!」
「ドラコ、もう止めるんじゃ。クリスの言う通り、わしに任せてくれれば全て解決してみせよう」
「ドラコ……」
クリスは召喚の杖を握っていない、もう一方の手をドラコに向かって差し出した。
「覚えているか?1年生の時、禁じられた森で交わした約束を……」
「……禁じられた森で?」
「あの時ドラコは私に言ったんだ、何があっても離れていかないって。ならその約束を、今果たしてくれ」
「……約……束」
ドラコの手が、ゆっくりとクリスの方に伸びて行った――その時。
「どうなってやがる!ドラコ!?」
乱暴な音と共にドアが開き、4人の『死喰い人』がドカドカと屋上にやって来た。ドラコは伸ばしかけていた手をサッと引っ込め、『死喰い人』達の陰に隠れてしまった。
クリスはもう少しでドラコを自分の方に引き寄せられたかと思うと、目の前の『死喰い人』達に殺意が湧いた。
「あ~ら、首尾よくダンブルドアを追い詰めたみたいじゃない。よくやったわドラコ」
「それによく見たら『闇の姫君』まで居るとは……上々じゃないか」
クリスが杖を構えようとした、ほんの一瞬を『死喰い人』達は見逃さなかった。クリスは両手両足を縄で縛られ、ずんぐりした男にまるで俵の様に担がれた。
それよりも腹立たしかったのは、大事な召喚の杖をその隣にいた丸太の様な女に奪われた事だっだ。
「さあ今だ、ダンブルドア殺れ」
そう吐いたのは、『死喰い人』の中でも一番気が短そうで、体毛の濃い獣の様な男だった。
ドラコは『死喰い人』達の陰に隠れながらも、明らかにその男と距離を取ろうとしていた。
「……僕に指図するな」
「じゃあオレが殺ってやる。命令なんて、後から幾らでも上手く言い繕ってやるよ」
「駄目だ!お前はいつもそうだ、フェンリール。命令を遂行するのは我々全員の使命なのだ!」