第21章 【あの約束をもう一度】
「無事か!?クリス!?」
「っ、あ……シリウス?」
聞き覚えのある声に反応して顔を上げると、シリウスがクリスを助け起こしてくれた。
「ルーピン先生が、まだ向こうで戦ってる……加勢に行ってくれ」
「分かった。……全く2体同時召喚なんて、無茶をする」
「はは、全くだ……」
「ビル、クリスを頼んでも良いかい?私はルーピンの加勢に行って来る」
「分かった」
シリウスがその場を去って行ったと同時に、クリスはビルの腕を振り払って立ち上がった。なんとなくだが、フェリシス・フェリックスの効き目が切れてきたような気がしたが、そんな事どうでもよかった。
クリスの体を動かす脈動が、まだ内側で燃え滾っていた。
(――まだだ、まだ終わっていない。まだ私は、ドラコを助けていないッ!)
その思いだけで、クリスは制止を振り切り塔へと続く階段を上って行った。途中、何度か体力が足りずに倒れそうになったが、その度に召喚の杖を支えにし、何とか最上階まで辿り着いた。
最上階の扉の向こう側から、小さくだがダンブルドアの声が聞こえてきた。
……よし、間に合った。
クリスは力を振り絞ってドアを蹴破った。
「迎えに来たぞ、ドラコ!!」
「……クリス」
ファーストネームで呼ばれるのは久しぶりな気がした。そして昔と変わらぬその響きに、クリスはどうしてかホッとしてしまった。
だが現状を見るに、ホッとするのはまだ早そうだった。
何故か一緒に城を出たはずのハリーの姿は無かったし、ダンブルドアの杖と思わしきものはドラコが握っていた。