第21章 【あの約束をもう一度】
「悠久の空を翔ける、緑の君よ」
クリスが詠唱を始めると、足元に召喚術独特の光を伴った魔方陣が現れた。
これで全てうまくいく!クリスはより一層集中力を高め、最後の呪文を唱えた。
「古より伝わりし血の盟約において汝に命ず!出でよ――シルフ!!」
途端に目を覆いたくなるような眩い光が、辺りを照らした。それと同時にいつも精霊を召喚する時の様に、血液が逆流するような、それでいて自分の体が自分のものではないような熱が、召喚の杖を介して沸き起こる感覚がした。
クリスは召喚が成功したとみると、間髪入れずに煙幕の中シルフに命令した。
「シルフ!この煙幕を吹き飛ばしてくれ!!」
言うが早いか、緑色の突風が廊下の端から端まで吹いた。するとあの邪魔だった煙幕は消え、そしてドラコの姿も消えていた。
だが、クリスには何故かドラコの居場所が分かる気がした。これもフェリックス・フェリシスのお陰なのだろうか。
とにかくその場所に向かって走ろうとしたその瞬間、クリスの耳たぶの下を何かが通り抜けた。
「おっと、外したか……まあ良い」
「どうせ狩るなら、遊びがいのある獲物の方が良いってなぁ」
煙幕の中で気づかなかったが、真っ黒いローブを着た見たことのない連中が5、6人ほど立っていた。恐らく『死喰い人』だろう。
連中は精霊を目の当たりにしていながら、恐れをなして逃げ出そうとはしていなかった。むしろ、精霊と戦うのを楽しみにしているように見えた。
「グレイバック、お前は先に行け。この先にもまだネズミがいるはずだ。ギボン、お前もだ!」
「行かせるかッ!!」
ロンが杖を構えた時、ロンの背後から赤い光線が放たれた。咄嗟の出来事だったので『死喰い人』は避けきれず、見事に顔面にぶち当たった。
誰の援護かと思い振り返ると、そこに立っていた人を見て、クリスは思わず満面の笑みを浮かべた。
「私の生徒達に手を出すだなんて、随分命知らずみたいだ」
「ルーピン先生っ!!!」
「このっ、なり損ないがぁ!!」