第21章 【あの約束をもう一度】
ルーナを連れて『太った婦人』の絵画の前に来ると、他のメンバーはもう全員揃っていた。クリス達3人と、ジニー、ルーナ、ネビルを足した6人でダンブルドアが戻るまでホグワーツを守る。それがクリス達に託された任務だった。
「よしっ、それじゃあ僕とネビルがマルフォイを見張るよ。多分こっちの方が危険が多いから」
「待った、ドラコの方には私も行くぞ。アイツを止めるのは私の役目だ」
「でもクリス……!」
「べつに良いんじゃない?好きな方に行けば。どっちもあんまり変わらなさそうだから」
確かにルーナの言う通り、どっちに行っても危険なのは変わらない。
ロンは何か言いたげだったが、時間が迫っているのを鑑みたのか、何も言わなかった。
それからクリス、ロン、ネビルが『必要の部屋』を見張るメンバーに、残りの3人がスネイプの部屋を見張るメンバーに別れると、皆で少しずつフェリシス・フェリックスを飲んだ。
途端に頭が少しボーっとする様な、逆に冴えた様な不思議な気持ちになった。
「よし、行こうか!」
ロンの声と共に、6人は二手に分かれた。これから何が起こるのか分からないが、怖いとか不安とかのマイナス要素は1つも感じられなかった。
これが『幸運の液体』の力なのかと思うと、人生を狂わされる人間がいるのも頷けた。
8階に着くと、ロンとネビルとクリスは『必要の部屋』の入り口付近に杖をかまえて立ち、とにかくドラコが出て来るのを待った。
クリスは杖を構える傍ら、いつでも精霊を召喚できるようにしておいた。これもフェリシス・フェリックスの効き目なのか、絶対に召喚出来るという確信が自分の中にあった。
3人が『必要の部屋』の前に立つこと30分ほど、突然壁の中から爆発するような音がしたと思ったら、扉が開いて中からドラコの顔が見えた。しかし――……
「ドラコッ!」
「……ッ!!」
クリスの呼びかけも虚しく、今度は黒い煙幕が廊下一面に広がった。
それと同時にドラコの姿も見失い、クリスは急いで杖明かりを灯したが、全く意味がなかった。
この煙幕はきっと何か特別な魔法で出来ているのだろう。
ならば、その上を行くだけだ!――クリスは召喚の杖を握りしめ、神経を集中させた。