第21章 【あの約束をもう一度】
ハリーが託してくれた時間を無駄にしないために、ロンは早速フェリシス・フェリックスを飲もうと、クリスの手から瓶をとった。それを、ハーマイオニーが遮る。
「待って」
「どうしてさ!?」
「ちょっと待って、少しでも手分けして味方を集めましょう。監視役は多ければ多い程良いはずよ」
「でも時間がないぞ!?」
「本当はDAメンバー全員が集められれば良いんだけど……そうだわ!去年魔法省に行ったメンバーだけでも声をかけましょう。時間の猶予は10分よ」
「分かった、私はルーナの所へ行く!忍びの地図を貸してくれ!」
クリスは驚くべき早さで地図の隅から隅まで目を走らせると、ルーナが『薬草学』で使う温室の近くをフラフラしているのを見つけた。
クリスはロンとハーマイオニーに言葉をかける暇すら惜しくて、何も言わずに大急ぎで談話室を出て行った。
クリスの頭の中は、半分はハリーへの心配で、もう半分はドラコへの心配だった。
ハリーは『必要の部屋』でドラコの歓声を聞いたと言っていたが、本当だろうか。
ドラコの無事はダンブルドアが保障してくれるはずだ。そのダンブルドアが、今、ドラコから離れて遠い地に行っている……。クリスはなんだか嫌な予感がしてたまらなかった。
「ルーナ!!」
クリスは温室の近くに差し掛かると、大声でルーナの名前を呼んだ。あっちから出て来てくれた方が、探す手間が省けると思ったのだ。
同じ様に2、3回ほどルーナの名前を大声で叫ぶと、3号温室の陰からくすんだ金髪がふっと現れた。
「……なに?ずいぶん慌ててるね」
「久々のDA集合だ、嫌なら断って良いぞ」
「ううん、大丈夫だよ。ずっと待ってたから」
ルーナはふんわり笑うと、カバンからよく分からない粉を取り出し、クリスに振りかけた。それからクリスが何か言う前に、1人で城の方に向かって走って行ってしまった。
「まあ、やる気十分で頼もしい……かな?」
相変わらず予測の取れないルーナの奇人変人ぶりに、クリスはそれまで肩に乗っていた緊張が取れて、つい零れてしまう笑みを隠すことが出来なかった。