第20章 【束の間の別れ】
「――僕、とにかく行かなきゃ」
それだけを言い残し、ハリーは校長室へ走って行った。その後姿を、ロン、クリス、ハーマイオニーの3人が見守る。
あのダンブルドアが一緒なのだから無事に決まっているといくら言い聞かせても、まるで水と油の様に不安が溶けることはなかった。
とにかく、ハリーが無事に戻ってくることを信じて、3人は一旦談話室に引き上げた。
テスト勉強をする後輩たちにまじり、クリス達は談話室の隅っこで言わず、ただジッと「その時」を待っていた。
すると15分もしないうちに、ハリーが息を切らせて談話室に駆け込んできた。
乱暴に開かれた『太った淑女』は文句を言っていたが、誰もそんなもの聞いてはいない。クリス達は何があったのか聞こうとしたが、ハリーは猛スピードで男子寮の階段を駆け上り、そして同じ速さで談話室に戻ってきた。
「ごめん、時間が無いからちゃんと説明できないけど、よく聞いて」
「分かった。それで僕たち、何をすれば良いの?」
こんな時に頼りになるのは、理屈がなくても行動できるロンだった。
ハリーは早口で、ダンブルドアと『分霊箱』を壊しに遠く離れた洞窟に行くこと。また『必要の部屋』でマルフォイの歓声を聞いたこと。
そして最後に、15年前、例の『予言』をヴォルデモートに進言したのはスネイプだったと言った。
「これから僕とダンブルドアは学校から居なくなる。マルフォイにとっては今日がチャンスに違いない、だから手分けして『必要の部屋』とスネイプを見張って欲しい。それと――」
ハリーは丸めたソックスの中から、金色に輝く液体が入った小瓶を取り出した。その瓶の封は切られ、少しだけ中身が減っている。
「フェリシス・フェリックスだ、皆で少しずつ飲んで。皆に何かあったら――」
「全部彼方が飲んで、ハリー。何があるのか分からないのよ?」
「僕は大丈夫。それよりダンブルドアとの旅の間、皆が無事だって思っていたんだ」
「……分かった」
クリスはハリーからフェリシス・フェリックスを受け取ると、しっかり握手をした。
その手の上にロン、ハーマイオニーの手も加わり、4人はしっかりとその手を握り合った。
「必ずまた会おう」
そう言うと、ハリーは透明マントを被り談話室から姿を消した。