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ハリー・ポッターと夢幻の探究者

第20章 【束の間の別れ】


 もし『素精霊』または『マナ』について学ぶなら、フィレンツェはきっと良い教師となってくれるだろう。勿論断られるのは分かりきっていたので、クリスは負けじと強気の態度に出た。
 最悪知恵を借りれなくても、緑が豊かなフィレンツェの教室を借りることが出来れば、それで万々歳だとクリスは思っていた。

 クリスの強気な発言に、フィレンツェはその青い瞳でジッと見つめた。――きた、この心の奥底を探るようなケンタウロス独特の視線。
 ここで負けるわけにはいかないと、クリスは黙って紅い瞳でフィレンツェを見つめ返した。

「……厄災の星。私は、貴女の瞳は好きになれません」
「……分かっています」
「ですが、禁じられた森と引き換えに私が得たものを、自身から投げ捨てるわけにもいきません。良いでしょう、貴女が乞うべきことを、私は許します」
「感謝します、フィレンツェ」

 クリスが丁寧にお辞儀をすると、フィレンツェは静かにその場を後にした。

 よし、これで実験に最適な環境と最適な教師役を手に入れたぞ。クリスは心の中でガッツポーズをし、フィレンツェに聞こえない様に心の中で高笑いをした。

* * *

「え!?フィレンツェの個人授業をまた受けるの!?」
「フフフ、いつまでも「プリンス」に頼るだなんて愚の骨頂だ。私が目指すのは“その先”だからな」

 その日の夕食の席で、クリスは自慢げに話しを聞かせた。ハーマイオニーは純粋に羨ましそうにしていたが、ハリーとロンは信じられないという顔をしていた。

「ハーマイオニーじゃあるまいし、そんなに勉強して何が楽しいの?」
「言っただろう、将来の為だ。そういう2人は将来の為に何かしているのか?」
「そっ、それは……」
「卒業まで、あと1年以上あるし……」

 ごにょごにょと言い訳をならべる2人に、クリスは大きなため息を吐いた。
 だがそんな偉そうな態度のクリスだったが、実際のところフィレンツェの個人授業で何か特別な修行をしている訳ではなかった。
 いつも教室の芝生の上で楽な姿勢をとり、目を閉じて五感を研ぎ澄ませる。それしかしなかったし、フィレンツェも特にアドバイスらしい事を言ったりもしなかった。
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