第2章 【スタートライン】
思っていたよりも最高の評価である「優・O」が多かった事に、クリスは嬉しくなった。
しかし実技を必要とする3科目が落第したことについて、多少なりとも落ち込まないと言ったら嘘になる。試験があと数日遅ければ、実技試験もちゃんと受けられたのだが……。
「ねえ、ロン。どうだった?」
「見せっこしようぜ、ほら、クリスも」
「ああ、良いぞ」
誰にも見えないように、後ろを向いて震えているハーマイオニーを無視して、3人は試験結果を見せ合った。
ハリーは『占い学』と『魔法史』だけ落第したが、他は全て合格している。特に『闇の魔術に対する防衛術』では「優・O」の成績を収めていた。ロンもほとんど同じで、ハリーと違う点があるとすれば、どの教科も「優・O」が無い事くらいだ。
「クリスってホント、好きなものと嫌いなものの差が激しいよね」
「失礼だな、あの『薬草学』で「可・A」を取ったじゃないか」
「え?それ自慢なの?」
「私にすれば立派な成績だ」
あの偏屈で興味を示さないものには絶対に手を出さない、我がままお嬢様だったクリスにしてみれば、この成績は立派なものである。きっとチャンドラーも草葉の陰で泣いているだろう。
そしていよいよ、ハーマイオニーの成績を拝む時が来た。
「ハーマイオニー、どうだった?」
「私、その……えっと、悪くない。そう……悪くはないわ」
「それじゃあ、そろそろ見せてくれても良いんじゃないですかね?」
ロンが我慢しきれず、ハーマイオニーの手から成績表を抜き取った。ハーマイオニーの成績は10科目中「優・O」が9つ。残りの1つは『闇の魔術に対する防衛術』の「良・E」だった。
ここまで良いと嫌味を言う気も、おめでとうと言う気も起きない。ま、ハーマイオニーだしな、という成績である。