第2章 【スタートライン】
「さてと、これで肩の荷も下りた。ハリー、庭でクィディッチやらない?」
「いいね、やろう!やろう!」
「じゃあ私はガレージでおじさんのコレクションを拝見するか。ハーマイオニーは?」
「私は……天気も良いし、庭に出てるわ」
「それじゃあ、また昼食で」
クリスはガレージに降りて行って、ウィーズリーおじさんの集めたマグル製品コレクションを眺めた。
ウィーズリーおじさんは新しく『偽の防衛呪文ならびに保護器具の発見ならびに没収局』という恐ろしく長ったらしい部署に移り、いつも帰りが遅い。
それでなくとも、今魔法省は猫の手も借りたいほど忙しいのだ。だがそのお陰で、クリスは1日中この宝の山に埋もれて、楽しい時間を過ごす事が出来る。
今日もいつもの様に、ガレージに集められたコレクションに囲まれながら、古びたマグルの雑誌を読むという至福の時を過ごしていた。
だがふと、クリスは成績表の事を思い出した。実技が全滅だったということは、今学期から杖を扱う授業は取れないということだ。
先学期はやさぐれていたのでそれで良いと思っていたが、今は違う。こうやってマグル製品に囲まれて暮らすのも夢があって良いが、それでは父様達の仇はとれない。
何か今の自分に出来る事を考えなければ。クリスは目をつぶって思案した。
授業が取れないなら、その代わりにDAの時の様に個人で魔法を勉強するも良し。召喚術を研鑽するも良し。とにかく自分を高め、去年1年間の遅れを取り戻さなくてはいけない。
それが自分に課させられた役割だと思うと、いてもたってもいられず、クリスは雑誌を閉じ、ガレージの階段を駆け上っていった――。