第2章 【スタートライン】
2、3回扉をノックする音がして、トンクスが入って来た。
去年、グリモールド・プレイスで出会ったトンクスは若くて優秀な闇払いと言うだけでなく、明るく活発な人だった。『七変化』という自分の外見を自由に変えられる特技を活かして、ハーマイオニーやジニーをしょっちゅう笑わせていたのに、今のトンクスからはその面影の「お」の字も見えない。
髪は色あせた風船ガムの様な色をしており、無理やり笑った仕草がやつれた顔をより一層際立たせた。
「どうしたの、トンクス?」
「はい、これ。ダンブルドアから預かって来たんだ。先学期の『O・W・L試験』の結果だよ」
「うそっ!だって予定じゃ明日ってっ……!」
「だから、直接預かって来たんだって。それじゃあ、よい週末を」
そう言ってトンクスはため息と共に部屋を出て行った。ハーマイオニーは手紙を受け取ると、戦々恐々と言った顔で、封筒を何度も何度も見返している。
逆にクリスは、筆記はさておき、実技は落第決定だと分かっていたので、何の期待もなく封を開けた。その途端ハーマイオニーが奇声を発した。
「ああああぁぁぁーーー、だめえぇぇぇーーー!!!!」
「どっ、どうしたハーマイオニー!?」
「ちょっと待って……4人……4人一緒に開けましょう?」
ハーマイオニーの成績なら、どの科目も10科目満点だろう。しかし何を悲観しているのか、当のハーマイオニーは「あの訳は間違っていた」とか「あの回答では不十分だった」とかブツブツうるさいので、面倒だが彼女の言う通りにした。
「……良い?いくわよ、3・2・1――」
サッと中の手紙を取り出すと、クリスは1枚の紙を広げた。
【普通魔法レベル試験(O・W・L)成績】
クリス・レイチェル・グレインは以下の成績を収めた。
・天文学――優・O ・薬草学――可・A
・マグル学――優・O ・魔法史――良・E
・呪文学――不可・P ・魔法薬学――優・O
・占い学――可・A ・変身術――不可・P
・闇の魔術に対する防衛術――不可・P
以上である。