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ハリー・ポッターと夢幻の探究者

第19章 【恋人たち】


 そう言って、マダム・ポンフリーは下がって行った。
 クリスはベッドサイドの椅子に座り、ジッとドラコを見つめた。本当に大丈夫なのかと疑いたくなるほど、色素の薄い顔がより一層青白く見える。
 閉ざされた目の下にはハッキリと分かる隈が出来ていて、それを見ると同時にクリスはマートルの前で泣くドラコの姿を思い出した。

『無理だ、話したところで何にもならないッ……僕がやらなきゃ、僕が……殺される……』
『駄目なんだ、僕ひとりでやらなくちゃ……じゃないと、じゃないとアイツが……』

 あんなドラコを見るのは、クリスでも初めてだった。
 ルシウスおじ様のキツイ躾けにも、1度も泣き言を言ったことは無かったし、特に自分の前ではいつも虚勢を張っていた。そのドラコがここまでになるほど追い詰められているなんて、これじゃあ折角ダンブルドアにドラコの事を頼んだ意味がない。

「ドラコ、すまな――」

 クリスが小さく囁きかけたその瞬間だった。医務室のドアが荒々しく開いて、殺意に目覚めたパンジー・パーキンソンが真っ直ぐクリスの元にやってきた。そして口を開くより先に、クリスの頬を思いっきり引っ叩いた。

「――何でアンタがここに居るのよ?」
「パンジー……」
「何で!?何でアンタがここに居るの!?ここはアンタなんかが居て良い場所じゃないのよ!!」

 いつもキーキー甲高い声で話すパンジーだったが、この時は甲高いというより、腹の底から圧しだす様な嫌悪感にまみれた怒声だった。

「……出て行ってよ」
「分かった、でもその前に――」
「早く出て行きなさいよ!ドラコをこんな風にしたくせに!!アンタなんかが居るからドラコが辛い目に合うって分からないの!?出て行きなさいよ!出て行ってッ!!!」

 足に根が生えたように動けないクリスの体を、クラッブとゴイルが両脇から抱えて持ち上げ、無理やり医務室の外へ追い出した。
 クリスは弱々しく医務室の扉に手をかけようとしたが、寸前でパンジーの言葉を思い出し、力なくその場にうずくまった。
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