第2章 【スタートライン】
ロン、クリス、ハーマイオニーの3人は当然とばかりに首を縦に振った。
あのダンブルドアの個人授業――クリスも去年、魔法が使えなくなった所為でケンタウロスのフィレンツェから個人授業を受けた事があったが、それとは比べ物にならない好待遇だ。ハッキリ言って羨ましい。
「でも、なんでいきなり?」
「多分、予言に関する事なんだと思う。ほら、魔法省で連中が欲しがってたやつ」
「でも予言は壊れてしまったんだろう?新聞じゃ面白おかしく騒ぎ立ててるが……」
「実は……新聞の言う通りなんだ」
その言葉を聞いて、クリスは一瞬言葉を失った。クリスだけではない、ロンも、ハーマイオニーも何も言う事が出来なかった。
真剣なまなざしで、ハリーは言葉を続けた。
「あのガラス玉は、だたの記録に過ぎなかったんだ。あの予言は、どうやらトレローニー先生がダンブルドアに告げたものらしい。あの後、校長室で予言の全貌を聞いたんだけど、その予言によれば――どちらかが生き残るには、どちらかが死ななければならない。つまり、僕かヴォルデモート、どちらかだ」
クリスは自分でも気づかないうちに、奥歯をギリッと噛みしめた。体の奥から得体のしれない、怒りの様なものがふつふつと立ち上ってくるのを感じる。
(……何故、ハリーなんだ。何故、私じゃないんだ!)
殺したい程憎んでいる相手を、自分ではなく他の人間が殺す運命にあるだなんて歯がゆいにも程がある。クリスは左手を握りしめると、ハリーに向かって力強い視線を投げつけた。
「ハリー、1つ約束してくれ」
「な、何?」
「ヴォルデモートを殺す時は、私も一緒だ。いいな?」
――選ばれし者、その運命は15年前から変わらない。
しかしだからと言って、母様を殺し、父様を殺し、セドリックを殺した奴が死ぬまで、ただジッと待っていられるほどクリスは人間が出来てはいない。
それに自分には奴の死を見届ける『権利』があると思う。それは大切な人を殺されたというだけではない。この身に流れる血の全てがその証しだ。
ハリーもその事は分かってくれているのだろう。その証拠に、ハリーはクリスの眼差しをしっかり受け止めた。
「うん、分かってる」
「……ありがとう、ハリー」
「4人とも、入って良い?」