第18章 【ダンブルドアの過去】
クリスが何も言わないでダンブルドアを見つめていると、まるでクリスの心汲み取ったかの様に、少し間をおいてからダンブルドアは言葉をつづけた。
「あれは事故だったと自分を納得させても、月日が経つにつれ、歳を取れば取るほどその苦しみは大きくなるばかりじゃ。分かってくれるかな、クリス。殺めてから後悔しても遅いのじゃよ」
それはクリスを説得しているというより、まるで自分に言い聞かせているようだった。
ダンブルドアの云わんとしていることは分かるが、だからと言ってすんなり納得が出来ないのも確かだった。しかしこんなに脆いダンブルドアを見るのは初めてで、クリスは何も言うことが出来なかった。
「幸い、君は人を愛することを知っている。ほんの一欠けらで良い、実父に心を傾けてやってくれぬか?そうすれば、君は最悪の事態を免れるだろう」
「それは……すみませんが、約束出来かねます」
「……そうか。でも君ならばきっと分かってくれると信じている」
お互いに、もう伝えたいことは伝え終えた。これ以上はどこまで行っても平行線を辿るだけだろう。
しばし沈黙の後、ダンブルドアは頬をつたった涙を拭うとおもむろに立ち上がり、扉に手をかけた。
「さあ、もう帰る時間じゃ。最後に何か聞きたいことはあるかね?」
「いいえ……ただ1つお願いがあります」
「わしに出来る事ならば、何でも叶えよう」
「ドラコをーー止めて下さい」
クリスは消え入りそうな声で、そう呟いた。
きっとダンブルドアなら、学校で起こっている全ての事を見通しているはずだろう。『必要の部屋』に入る方法が分からない今、ドラコを止めることが出来るのはダンブルドアしかいないとクリスは考えた。