第18章 【ダンブルドアの過去】
「それは、君がヴォルデモートの娘だからじゃよ」
その時、背筋に這い上がった嫌悪感をどう言い表して良いのか分からなかった。クリスは知らず知らずの内に爪が食い込むくらい両手を握りしめていた。
「私は、あんな奴を父とは思っていません」
「君がそう思っていようと、残念ながら事実は変わらない」
「私はっ――!!」
「――君には、わしと同じ轍は踏んでほしくないんじゃ」
そう言ったダンブルドアの表情が今にも泣きだしそうだったので、クリスは思わず息をのんで言葉を引っ込めてしまった。
ダンブルドアは心を落ち着けるように目を閉じて静かに深呼吸をすると、深いブルーの瞳でクリスの眼を見た。それから懺悔するように、小さく震えた声でクリスに向かって告白した。
「君にだけ打ち明けよう。わしは昔……実の妹を殺めておる」
「せ、先生が?まさか、嘘……ですよね?」
「悲しいが事実じゃよ、クリス。わしはそれ以来、後悔しない日はない」
ダンブルドアの声の震えが、だんだん大きくなってきた。
いや、声だけではない。まるで涙を堪える子供の様に、ダンブルドアの全身が小さく震えている。
それを見て、クリスの体を支配していた憤りが何処かへ消えていくのを感じた。
「その……訊いても良いですか、先生。何故、妹さんを……」
「事故だった、と言えば簡単だが……結局その事故を引き起こしたのはわしの傲りじゃった」
「どういうことですか?」
「妹は幼いころマグルに襲われ、以来魔法が使えなくなったスクイブだった。その妹の世話をしなければならない事に、若いわしは不満を抱えていた。そして不満は怒りを生み、怒りは争いを生み、その結果……力の無い妹が犠牲になった」
ダンブルドアの深いしわが刻まれた頬に涙が零れた。
クリスはもうこれ以上聞きたくないくらい胸が苦しくなったが、心に住むもう一人の自分が、ここで引き下がってはいけないと、恐れずにこれを受け入れろと言っていた。