第18章 【ダンブルドアの過去】
その言葉を聞いて、クリスは体の中に巡っていた血液が今度は一気に下がっていくような感覚に陥った。
確かに最初、ハリーだけがダンブルドアの個人授業を受けるのを依怙贔屓だと思っていたが、ダンブルドアにはダンブルドアの考えがあるんだろうと思って納得した。
だがまさかこんなところで、また自分だけ蚊帳の外に追い出されるとは思わなかった。
クリスはその場で目を瞑って一瞬だけ思案すると、すぐさま椅子から立ち上がった。
「ど、どうしたのクリス?」
「ダンブルドアのところに行って来る。ちょっと納得が出来ない」
「でもこの時間に出歩いたら、見回りの先生たちに何を言われるか分からないわよ?明日にしたら?」
「悪いけどそんな悠長なことを言ってられるほど、私は人間が出来てはいないんだ」
それだけ言うと、引き留めようとするハーマイオニーの手を振り切って、クリスは談話室を飛び出した。
校長室に向かう道すがら、クリスはこれまでヴォルデモートに味あわされた苦渋を思い出していた。
母様から始まり、父様やチャンドラー、そしてセドリックの死。彼らの無念を晴らす為なら何でもするし、それが分からないダンブルドアでは無いはずだ。それなのに――。
「……しまった、合言葉……」
校長室を守るガーゴイル像の前まで来て、クリスは肝心なことをハリーから聞きそびれた事に気づいた。
談話室に戻ろうかどうしようか考えていると、まるでクリスがやって来ることが分かっていたかの様に、ひとりでにガーゴイルの像が動き出し、校長室へと続く螺旋階段が現れた。
ここまでされて、まさか帰るわけにはいかない。
クリスは誘われるがまま螺旋階段を上り、校長室の扉を叩いた。すると中からダンブルドアの静かな声が聞こえた。
「――お入り」
「失礼します」
扉を開けると、ダンブルドアはいつもの様に机の上で手を組んで座っていた。その顔はいつもの柔和なダンブルドアとは少し違い、穏やかさの中に悲しさが垣間見えた。
「やはり……いずれ来るとは分かっていたんじゃがな……」
「それなら単刀直入にお願いします。私もハリーと一緒に連れて行って下さい」
「残念だが、それは出来ぬ」
「どうしてですか!?」