第17章 【姿現しの試験】
【みんなへ】
昨晩、アラゴグが死んだ。ハリーとロンとクリスはあいつに会った事があるから分かると思うが、あいつは俺にとって特別な奴だった。きっとハーマイオニーも会っていたら気に入ったと思う。
正直、あいつが死んでしまって、俺はどうして良いか分からねえ。あいつを埋葬してやりてぇが、独りじゃ無理そうだ。出来れば黄昏時に、マントを着て俺の小屋に来てくれ。俺の一生のお願いだ……。
―ハグリッド―
「……ふざけてる」
「いや、ハグリッドとしては大真面目なんだと思うよ」
「正気じゃない!アイツは自分の手下に、僕らを喰わせようとしたんだぜ!?クリス、君だって忘れちゃいないだろ!?」
「忘れたくても忘れられるか、あんなもの」
「それに、いくらマントがあるからって夕暮れ時に呼び出すなんてどうかしてるわ!今がどんな状況か分かっているのかしら!?」
ハーマイオニーの言うことは尤もだった。学校が閉鎖されるかどうかと言うほど危険な状態なのに、いくら透明マントがあるとは言え、外に出て来いなど仮にも教員の言う事とは思えない。
勿論ハグリッドは大切な友人だが、それとこれとは話しが別だった。
「とにかく、ハグリッドには悪いけど独りで埋葬してもらいましょう」
「そうだね、運がなかったと思って諦めてもらおう」
「運がない……そうか、それだよハリー!!」
突然、ロンが弾かれた様に立ち上がって、ハリーの肩を掴んだ。
「君こそ幸運を味方につけるべきだ!」
「……え?どういうこと?」
「あれだよ!『幸運の液体』を使うんだよ!そうすればハグリッドの事だけじゃない、スラグホーンの記憶だってきっと手に入る!!」
ロンの発言に、3人は「あっ!」と揃って声を上げた。
確かに『幸運の液体』であるフェリックス・フェリシスを使えば、全てが上手くいくかもしれない。それにどうせ「プリンス」の教科書を使ってタダで手に入れたような物なのだ、試してみる価値は大いにある。
「それじゃあ、ハグリッドが指定した黄昏時……その時が来たら薬を飲むよ」
「ハリー、君なら絶対にやれるさ」
「君たちもね、幸運を祈っているよ」
ハリーがニッと笑うと同時に、「姿現し」の試験開始10分前を知らせる鐘が鳴った。