• テキストサイズ

ハリー・ポッターと夢幻の探究者

第17章 【姿現しの試験】



 やがて厳しかった冬が過ぎ去り、徐々に春の気配が訪れるようになった。クリスは相変わらず本を片手に8階の廊下でドラコを見張る日々を送っていたが、特にこれと言った変化は何もなかった。

 こう変化がないと、人間誰しも気持ちが緩んでくる。しかしその緩んだ気持ちを引き締める出来事が、まるで最初から用意されていたかの如くクリスの耳に入ってきた。

 それは第1回目の「姿現し」試験日のことだった。既に誕生日を迎えたロン、クリス、ハーマイオニーは試験を受ける為に、魔法省から発行された「姿現し」についての諸注意が書かれたパンフレットを片手に朝食を取っていた。

「ねえ、レイブンクローに何かあったの?」

 クリスがパンフレットに目を通しながら紅茶を嗜んでいると、不意にハリーが小声で話しかけてきた。つられる様にレイブンクローのテーブルに目をやると、確かに不穏な空気が漂っている。それを見て、ハーマイオニーが小さくため息をついてこう告げた。

「昨日、モンゴメリー姉妹の弟が亡くなったそうよ。……狼人間に襲われたんですって」

 その途端、クリスの全身の毛が逆立った様な気分がした。ハリーが更に詳しく話しを聞くと、ハーマイオニーは襲った犯人はフェンリール・グレイバックだったと説明した。

「フェンリール・グレイバック、って確か……」
「ああ、ルーピン先生を襲った奴だ」

 忘れもしない、あのクリスマスの時、先生自らが教えてくれた。あの時の先生の表情は、未だにクリスの脳裏に焼き付いている。

 ――今、先生はどんな気持ちでいるんだろう。自分を狼人間にした相手と行動を共にし、幼い子供が餌食になっているのを知りながら助けることが出来ないなんて……。
 あの優しい先生の気持ちを思うと、クリスは気が付かないうちに血が出るほど強く下唇を噛んでいた。

「クソッ……こんなところで、くすぶっている場合じゃないな」
「でも、どうすれば良い?スラグホーンの記憶を手に入れなきゃダンブルドアは動いてくれない」

 ハリーがそう言った、正にその時。大広間に沢山のフクロウが入ってきて、ハリーの手元に1通の手紙を落とした。まさかダンブルドアからかと思って慌てて封を切ると、それは涙に濡れたハグリッドからの手紙だった。
/ 184ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp