第17章 【姿現しの試験】
姿現しの試験は、広々とした校庭で行われた。ここからホグズミード村の広場に設置されたポイントまで無事に「姿現し」出来れば合格とされる。
組分けの時と同様、ABC順に名前が呼ばれ、一人また一人と校庭から姿を消した。
「グレイン・クリス!」
試験官から名前を呼ばれ、クリスはしっかりした足取りで前に進み出た。
先ほどフェンリール・グレイバックの話しを聞いた所為か、これまでとは違う緊張感が身体の中を走っているのが分かる。
しっかりしろ、こんな試験くらい乗り越えられなくては、ヴォルデモートを殺し、父様達の仇を取るなど夢のまた夢だ。
クリスはそう自分に言い聞かせ、静かに息を整えた。
「それじゃあ、準備は良いかね?3――2――1……」
合図と同時にクリスはスッと目を閉じ、つま先でくるっと綺麗に回転した。すると今までの様に管を無理やり通るような不快感はなく、その場に溶けて消えるような不思議な感覚がした。
目を開けずとも、上手くいったことが分かった。校庭に居た試験官とは違う声が、クリスの名前を呼んだ。
「ふむ、見事だ。グレイン・クリス合格」