第2章 【スタートライン】
「全く!男の子って本当にだらしないんだから!!」
「無茶言うなよ、だってヴィーラの血が入ってるんだぜ?」
「彼方はそれ以前の問題です!!」
またロンとハーマイオニーの痴話喧嘩が始まった。いい加減聞き飽きたクリスは、ハリーに話しを振ることで話題を無理やり変えた。
「そう言えばハリー、シリウスから便りは来たか?」
「来てるよ、しょっちゅう。基本的にはグリモールド・プレイスの住み心地が最悪だって内容ばっかり」
「私と同じだ。あの寂しがりはきっと一生治らないんだろうな」
去年の夏休み、よくシリウスと同じベッドで寝ていたことを思い出し、クリスは僅かに笑った。
多分他の人間が屋敷にいれば、もしくは自由に外を出歩けるようになれば少しはマシになるんだろうが、一応まだ仮釈放の身だ。ダンブルドアの目の届くところでなければ自由に動く事は出来ない。
「早く無実だって証明されれば良いんだけどね。魔法省の大臣が変わったのに、まだ駄目なのかな?」
「ん?魔法省の大臣って変わったのか?」
「……クリス、新聞読んでないの?」
「あんな下らないもの、誰が読むんだ?」
きっぱりそう言うと、ハリーだけでなくハーマイオニーまでもがため息を吐いた。優等生代表のハーマイオニーが、2週間も前に魔法省の大臣が小心者のファッジから、スクリムジョールという闇払い局の元局長に変わったと、親切丁寧に教えてくれた。
「へえ、それは良かった。で、何か問題が?」
「そこなの、ダンブルドアとはあまり意見が合わないみたいなの。私も詳しくは知らないけど……とにかく新聞にはそう書いてあるわ」
「ダンブルドアは、スクリムジョールは行動派だって言ってた」
「なるほど、行動派ゆえのてらいがあるってことか」
ロンがそう締めくくると、一瞬部屋がシーンとなった。
静寂を打ち消すように、ハリーが慌てて朝食を口に運び始めた。ウィーズリーおばさんの特製オムレツを食べながら、ハリーが何でもない事のように言った。
「あ、僕ダンブルドアの個人授業を受ける事になった」
「は?」
「え!?」
「何ぃ!?」
「そんな驚く事?」