第17章 【姿現しの試験】
こうして何の進展もないまま、1か月が過ぎようとしていた。ハリーはもう、無暗矢鱈にスラグホーン先生を追いかけるのを止め、頼みの綱である「プリンス」に何か良い方法が書いてないか、細かい手書きの文字を解読する時間が増えていた。
「ハリー、いい加減にやめなさい」
宿題を片手間に済ませて「プリンス」の教科書に目を凝らすハリーに、ハーマイオニーが厳しい声を出した。ハーマイオニーは自分より良い成績を取られたからなのか、全くと言って良い程「プリンス」を信用していなかった。
「いい?何度も言うけど、あくまでハリーのやり方でスラグホーン先生を説得しなくちゃいけないのよ」
「分かってるけど、もう正攻法は飽きたんだ。好きにやらせて」
「ハリーの言う通りだよ、あんなに逃げられちゃ手の打ちようがないじゃん」
「彼方はだまってて」
ハーマイオニーにバシッと言われると、ロンは肩をすぼめた。それを見て、クリスは「まるで一般家庭の縮図のようだ」と呑気なことを思っていた。
「ねえクリス、客観視してないで少しは貴女からも言ってちょうだい」
「待った、私を巻き込まないでくれ。明日の追加訓練で頭がいっぱいなんだ」
明日は2度目の追加訓練の日だったが、クリスはまだ「姿現し」のコツをつかめていなかった。と言うより、どうしても最初の訓練の時にドラコを下敷きにした恥ずかしい思い出が頭をよぎって、そのたびに失敗してしまうのだった。
そして翌日、追加訓練の為6年生の殆どがホグズミード村に集まった。4月に最初の試験日が設けられているので、この追加訓練である程度成果を出せなければ、試験をパスすることは難しい。
「えー、皆さんお早うございます。それでは、いつもの様にまずは列になって下さい」
訓練を指導してくれるのは毎度おなじみトワイクロスだった。相変わらず風になびかれたら飛んで行ってしまいそうなくらい儚げだ。
生徒達は言われた通り列になり、まず手始めに3メートルほど先にある輪の中へ「姿現し」をした。クリスも、この距離なら問題はなかった。
しかし列の前方にドラコの姿を発見した途端、急に体が強張ってしまい、結局この日も碌な成果が出せずに追加訓練は終了した。