第16章 【xxx】
それから暫くして、ジニーを含むチームメイトはミーティングがあるからと言って医務室を出て行った。クリスもドラコが籠っている『必要の部屋』の前に戻ろうかと思ったその時、静かに医務室の扉が開いた。
現れたのはルーナだった。
ルーナは殆ど足音さえも立てずに、スーッとハリーのベッドに近づくと、傍にいたクリスを無視してハリーの頭に巻かれた包帯に手を当てて静かに目を閉じた。
「うん、大した怪我じゃないね。丸1日寝てれば治る」
「どうして分かるんだ?」
「大きな怪我だと、大抵ノトーリアスが寄ってきて傷口を広げるんだけど、その気配がないから。でも念のためにシャルロッカを枕元に置いておこう」
相変わらずチンプンカンプンなことを言いながら、ルーナはカバンから猫の砂のような粒の大きい砂を取り出し、ベッドわきの小机にそれを山の様に盛った。
この浮世離れしたお見舞いに、クリスは吹き出しそうになるのを一生懸命我慢した。が、隣のベッドでロンが我慢しきれず盛大に笑い出した。
するとルーナはくるっとロンの方に向き直り、大きな目でジーッと見つめた。
「どうしたの?」
「いや、別に……ハリーは良いガールフレンドを持ったなあって思ってさ」
「あんたにもガールフレンドはいるじゃん。それも2人」
「なっ!?」
「……っくははは!流石だルーナ、もっと言ってやれ」
思ってもみなかったまさかのカウンター攻撃に、クリスは耐え切れず笑いだしてしまった。
確かに傍から見れば、ロンは2人の女の間を行ったり来たりしている優柔不断男だ。しかしそれを本人を目の前にしてスパッと言い切るとは感心に値する。やはり天然というのは恐ろしい。
「なに?あたし何か変なこと言った?」
「いや、正当な評価だよ。と、いう訳だからロン、とっとと覚悟を決めて別れるんだな。じゃないと今度は毒を飲んだって許してもらえなくなるぞ?」
クリスがそう言うと、今度は顔を真っ赤にしたハーマイオニーが無言でクリスの背中をバシバシ叩いてきた。
これ以上からかったら、ロンではなく自分がハーマイオニーに刺されそうだ。そう思ったクリスは笑いながら急いで医務室を後にした。