第16章 【xxx】
あのプレイボーイなら、きっと学生時代にくぐった修羅場の数もけた違いだろう。何か良い答えが返ってくるかもしれない。
そんなくだらない話をしていたら、もうすぐ試合開始の時間になってしまった。
「よし!じゃあ僕はもう行くよ。クリスはどうするの?」
「折角生徒の大半が校内から居なくなるんだ、今日こそドラコの尻尾を掴んで見せる」
「分かった、それじゃあまた後で」
ハリーが医務室を出ていくと、クリスはローブから忍びの地図を取り出してドラコの行方を追った。地図の上では、ドラコの名前が書かれた黒い小さな点が、ちょうど8階への階段を上って行く最中だった。きっとまた『必要の部屋』に行くのだろう。
どうにか部屋に入る方法が分かれば、ドラコの企みを暴くこともできるのだが……。なんとも歯がゆい思いで、クリスは地図をローブのポケットにしまった。
「それじゃあロン、私ももう行くぞ。どうせ暇なんだから、良い別れ文句でも考えておけよ?」
「はいはい、お節介ご苦労様」
ため息交じりで手をふるロンに、クリスは軽く頭を小突いて医務室を出て行った。
それからいつも通り、ドラコがいるはずの『必要の部屋』の前まで来くると、クリスはドラコが出てくるタイミングを逃さないように張り込みをつづけた。
その片手間に、昨日図書館から借りてきた本に目を通す。しかし殆ど内容が頭に入ってこなかった。
快復したとはいえ、毒を飲まされてロンが死にかけた――万が一対処が遅れていたら、あんな風に憎まれ口も叩けなくなっていたのだ。その原因をドラコが作ったのだと思ったら、クリスは胸が痛くなってきた。
何をしているのか知らないが、馬鹿な真似はやめてほしい。何か闇の陣営から命令を受けているなら、何でもいいから打ち明けて欲しい。あいつには……ドラコだけには間違った道を進んでほしくない。
クリスの脳裏に、墓場で見た父の最期の姿が浮かんだ。その時――
「クリス、大変よ!ハリーが……!!」
階下からハーマイオニーの叫び声が聞こえて、クリスの意識は一瞬にして現実に引き戻された。声の感じからして、ただ事とは思えない。
クリスが慌てて階段を降りると、踊り場にハーマイオニーが息を切らして立っていた。