第15章 【名前のない感情】
ドラコを監視すること3週間。ドラコの企みを暴くためハリーは文字通り四六時中、忍びの地図を確認していた。
その所為で、ハリーの成績はみるみる内に落ちていった。だと言うのに、ハリーは成績の事など何とも思っていない様だった。
この日もハリーは宿題を片手間にずっと忍びの地図を睨みつけていた。
「どこにも居ないんだ、地図のどこにも……おかしいと思わない?」
「学校の外に出た可能性はないのか?」
「あり得ないわ、今ホグワーツには厳戒態勢が敷かれた上に、ダンブルドア先生が追加で結界を張っているのよ。そう簡単に城の外に出るのは無理ね」
それでもハリーは地図から目を離そうとしない。気持ちは分かるがのめり込みすぎだ。クリスは期限が明日までの宿題を終わらせると、ハリーから奪うようにして忍びの地図を手に取った。
「クリス、何す――」
「黙って。……確かに居ない、変だな」
とは言っても、城内には1000人近い人間が居るのだ、見落としている可能性もある。クリスは早々に後片付けを終わらせると、地図を手にしたまま席を立った。
「どっ、どこに行くの!?」
「目が駄目なら足だ。ハリー、地図を借りていくぞ。君は少し宿題に集中したほうが良い」
頼みの「プリンス」も、宿題までは代行してくれないだろう?そう言って口の端をニヤリと持ち上げると、ハリーはしぶしぶ了承した。
* * *
談話室を出たクリスは、まず見張りであるクラッブとゴイルの名前を探した。
その方が、何らかの魔法で姿を隠したドラコを見つけるより早いだろうし、あの2人が姿を隠すような高度な魔法が使えるとも思えない。
地図に目を落とすと、ゴイルの名前はスリザリンの談話室に、クラッブの名前は8階の廊下にあった。まずどちらから探ってみるか考えた結果、クリスはクラッブの居る8階に向かった。