第15章 【名前のない感情】
酷い赤っ恥をかいた「姿現し」の訓練が終わり、そそくさと大広間を後にしようとしたクリスよりも先に、ハリーが大急ぎで大広間を出て行った。その後ろにロンが続く。
これは何かあるに違いない。クリスは一瞬ハーマイオニーと顔を見合わせたが、「仕方ないわね」と言いた気な彼女の表情を見て、2人の後を追いかけた。
「ハリー!ロン!どうしたんだ!?」
「分かんないけど、急にハリーが……」
「ごめん、ちょっと急いでるんだ。歩きながら話すよ」
寮への道を早足で歩きながら、ハリーはつい先ほど盗み聞きしたドラコとクラッブの会話を教えてくれた。
ドラコはゴイルとクラッブに何らかの見張りをさせているらしいが、それに対してクラッブが文句を言っていたというのだ。あの腰ぎんちゃくが不満を言うほどの事とは、いったい何なのだろう。
逸る気持ちを抑え談話室に戻ると、ハリーは大急ぎで男子寮への階段を上り、1枚の古い羊皮紙を手に戻ってきた。
「我、ここに誓う。我、善からぬ事を企む者なり……」
ハリーが呪文を唱えると、たちまち「忍びの地図」に、名前を記した無数の黒い点が現れた。
「マルフォイを探すのを手伝って!」
「……あった!スリザリンの談話室に居るよ」
ロンの言うとおり地下にあるスリザリンの談話室に、パンジーとザビニ、そしていつも一緒に居る腰ぎんちゃくのクラッブとゴイルの傍に「ドラコ・マルフォイ」と書かれた点を発見した。
それを見たハリーは安心した様な、ガッカリした様なため息を吐いた。
「駄目か……良いアイディアだと思ったんだどなぁ」
「諦めるのはまだ早いぞ、ハリー。見張っていれば必ず尻尾を出すはずだ」
「うん、そうだね。……よし!これからはずっとマルフォイを見張ってるぞ!」
ハリーは宣言どおり、その日から忍びの地図を片時も放さず、暇さえあればドラコを監視していた。休み時間はもちろん、授業中でさえハリーは忍びの地図でドラコの位地を確認していた。
しかし1週間が経ち、2週間が経っても、これと言った成果をあげる事ができなかった。
「……ハリー、大丈夫なのか?」