第14章 【DDD】
「残り5分!さあ、そろそろ仕上げの時間だぞ」
スラグホーン先生が期待を込めてそう言う頃には、クリスは最終段階にかかっていた。
抽出した毒薬の成分に対する解毒剤を慎重にビンに詰めていると、ハリーが大急ぎで机を横切って材料棚を漁っていた。何か良いヒントでも浮かんだのだろうか。
「時間だ。――全員、作業止め!」
スラグホーン先生の合図で、全員手を止めた。殆どの生徒の大鍋からは、不思議な匂いが立ち上っていた。
スラグホーン先生はそれぞれの生徒の出来ばえを見てガッカリしていたが、クリスとハーマイオニーの解毒剤を見て、満足したように頷いた。
「それじゃあハリー、君は何を見せてくれるのかな?」
期待を込めてそう言うと、ハリーはパッと手のひらを見せた。クリスの位置からは良く分からなかったが、手に何か持っているらしい。それを見て、スラグホーン先生は言葉を失った。そして次の瞬間、地下牢の教室全体に響くほど大笑いをした。
「はーっはっはっは!良い度胸だ、ハリー!ベゾアール石とはね!流石の私もこう来るとは思わなかった。全く君はたいした才能の持ち主だ!母親と一緒だ!!」
ベゾアール石と聞いて、クリスは1年生の頃にスネイプが言っていた言葉を思い出した。確か山羊の胃から取り出される石で、大抵の毒薬の解毒剤になるとかなんとか……。
「これぞ真の魔法薬学に必要な独創力だ!いやはや、リリーと全く同じ素晴らしい才能だよハリー!」
もうスラグホーンの頭にはクリスやハーマイオニーのことなど、キレイさっぱり無かった。スラグホーンはグリフィンドールに10点追加すると、授業が終わるまでハリーをべた褒めしていた。
チャイムが鳴ると、ハーマイオニーは怒って教室を出て行ってしまった。クリスはもうフォローする気もなかったので、あえて放っておくことにした。
「ハリー?」
「ごめん、先に行ってて」
ハリーはやけにノロノロと後片付けをしていた。ピンと来たクリスはロンと一緒に先に教室を出た。
ロンはハリーが自分にもベゾアール石を渡さなかった事を恨んでいたが、クリスが「そもそも勉強していれば何の問題も無かったぞ」言うとむっつり黙り込んだ。