第14章 【DDD】
「それでダンブルドアが僕に宿題として、正しい記憶をスラグホーン先生から受け取ってくるよう言ったんだ」
「そうか、頑張れ」
「頑張れじゃないよ!あのダンブルドアでさえ不可能だった事を僕にやれって言ってるんだよ?不可能に決まってるよ!」
「不可能ならダンブルドはわざわざハリーに頼まないだろう?大丈夫、君なら出来るさ」
クリスはハリーの肩に手を置くと、励ますように笑顔でそう言った。
「クリス、君……」
「ん?」
「他人事だと思ってるだろ?」
「ああ」
ヴォルデモートを直接殺す算段ならともかく、ヤツの記憶を探る旅にあまり興味はないし、あえてそれを隠すつもりもない。クリスが正直に認めると、ハリーはますます落胆してため息をついた。
* * *
それから数日間、ハリーはどうやってスラグホーン先生を説得するか頭を悩ませていたが、ロンの「授業の後にでも残って、ちょっとお願いすればイチコロだよ」という根拠のない言葉を信じてみることにした。
その日の『魔法薬学』は、用意された毒薬の解毒剤を作るという授業だった。
クリスは教卓の上から適当な薬を選ぶと、それを大鍋にあけて「スカーピンの暴露呪文」を無言で唱えた。ハーマイオニーはもちろん、クリスも既に無言呪文は十分習得していた。
「ねえ、クリス。それどうやるの?」
「教えない」
このところどの授業も内容が複雑化して、ついて来られる生徒とそうでない生徒に別れていた。
クリスは将来の為にどの分野も猛勉強していたから問題はなかったが、ハリーとロンは完全に授業から取り残されていた。
それでも「プリンス」のお陰でハーマイオニーより良い成績をとっていたが、今日の授業はカンニングでどうにかなるものではない。
クリスに断られたハリーは、駄目もとでハーマイオニーに声をかけた。
「ハーマイオ――」
「王子様にでも聞いてみるのね」
ハーマイオニーは依然として「プリンス」を信用していなかったので、今日の授業ほど痛快なものはなかっただろう。クリスよりもテキパキと準備を済ませ、やはり無言で呪文を唱えていた。
ハリーとロンはやけくそになって見よう見まねで薬を大鍋にあけて呪文を唱えていたが、上手くいっているようには思えなかった。