第13章 【クソったれクリスマス】
「適当に座ってくれ、今お茶を入れるよ」
久しぶりに訪れたルーピン先生の家は、相変わらずいろいろな物でごった返していた。たいていは古臭い年代物ばかりだったが、中には新しいものもあった。
「そう言えば、シリウスって今ルーピン先生と一緒に暮らしてるんだよね?どんな感じ?」
ハリーの言葉に、クリスは以前シリウスからの手紙にそんな事が書いてあった事を思い出した。なるほど、この新しいものはきっとシリウスのものなのだろう。
シリウスは一瞬ルーピン先生と目を合わせると、少し顔を曇らせた。
「あ、ああ……いや、実はリーマスとは殆ど別々に暮らしているんだ」
「どうして?」
「それは私が、普段は狼人間達と暮らしているからだよ」
「えっ……?」
クリスは一瞬、自分の耳を疑った。しかしルーピン先生の声からは、嘘やジョークはといったものは感じられなかった。
一種の緊張の中、クリスは恐る恐る尋ねた。
「どうして……ですか?」
「単純さ、任務のためだよ。フェンリール・グレイバックを筆頭に、狼人間の多くはヴォルデモート側についている。となると、私ほどスパイとして適任者はいないだろう?」
「フェンリール・グレイバックって?」
「恐ろしく残忍で、恐ろしく凶暴なやつさ。多くの人間を咬む事で、多くの仲間を増やし、多くの魔法使いを殺す事を目的としている。私も――奴に咬まれた内の1人だった」
ルーピン先生は人数分のお茶をテーブルの上に置いた。その横顔には、饒舌に尽くしがたい苦悩が見えた。
それを見て、クリスは猛烈に自分が恥ずかしくなった。
先生がそんな辛い任務に就いて苦しんでいると言うのに、馬鹿みたいに舞い上がって先生を口説こうだなんて、なんて愚かなんだろう。
考えてみれば、いつも自分の事ばかりで先生の気持ちを推し量った事など殆どなかった。
「私の話はこれまでにしよう。クリス、何かお願いがあるとか言ってたけど、なんだい?」
「あ……いえ、やっぱりいいです」
出来るだけ笑顔でそう返してみたものの、それがどれだけの効果を発揮していたか自分では分からなかった。
先生は優しい目をして頷くと、次にハリーに視線を移した。