第1章 出会い
育手の方も、守ってあげられた人も、
皆が口を揃えて「弛央梨はよく頑張った」と言ってくれた。
でも、それだけじゃ足りない。だって、
守れたのが、たった五人なんだから。
私がもっと強かったら、私がもっと
筋力もあるような男性だったら、もしか
したら、今よりももっとたくさんの
人の命を、助けられたかもしれない。
私は、未熟だ。
そんな足りない日々を送っていたら、
とある任務で、師範と出会った。
師範は、強くてたくましくて、私
なんかより多くの人を助けていた。
私は少しでも師範の役に立とうと、
ひたすら鬼を切っていた。
「お前、名前はなんだ?」
「え!?あ…、えっと、徳谷と申します……」
「徳谷か…下の名前は?」
「弛央梨です…」
「ほう、弛央梨というのか、気に入った!!
お前の戦いは実に派手だ!そして何よりも
派手に強い!!弛央梨、俺の継子になれ!!」
「………はい?」
という会話をした記憶がある…。
派手だ!派手だ!と言われたが、
「この性格だけは地味だな…、もっと
自信を持ってもいいんだが…」とも
言われた気がする。
私…そんなに暗い…かな?
………やめよう。こんな暗い話、
考えていたららちがあかない。
「弛央梨、そろそろ休憩にするぞ」
「わかりました」
師範の一言で、私は肩の力を抜く。
そういえば、最近師範には肩の力を
抜いて話せるようになってきたな…。
「師範、私冷たいお茶を淹れてきます」
「おう」
私は、さすがの師範でも、この暑さの
中で稽古を続けていたのだし、喉が
かわいているだろうと思い、道場を
出て、台所の方へと移動する。
私は急いで冷たい緑茶を淹れ、師範の
元へ届けようとし、玄関を通りすぎ
ようとしたとき、「邪魔するぞ」と、
水柱の冨岡義勇さんが入ってきた。
「と、冨岡さん!?」
「………」
む、無言…。正直、とても気まずい。
また、肩に力が入る。
「あ…の、師範、を……、呼んで
きましょう、か?」
恐る恐る尋ねると、冨岡さんは無言で
こくりと頷いた。今日は、師範に用が
あって来たようだ。
冨岡さんは、特に用もなくこちらへ
来るときがあるが、どう対応すれば
よいのか、まったく分からない。