第9章 Sketch3 --また冬に会おう※
分厚いカップに注意深く黒柿色の液体を注いでいる彼に、呆れた視線を向けた。
「お前は私の事を知っているのか?」
「内情ならキルトって気のいいオッサンから聞いてるよ」
椅子に腰かけて一口それを飲んだケリーは上目遣いで私を見、お互い特に言う事もなくやがて彼が立ち上がり伸びをした。
「朝寝でもしようか、寒いし」
「は?」
そうして私をひょいと抱き上げるとさっさと寝室に向かい、私を抱えたままで器用にベッドの中に潜り込んだ。
「お、前はどうしてそう人の話を聞かない?」
身動ぎをするとそれを拒否するかのようにこちらの胸の下で組まれている彼の腕にぐっと力がこもった。
「いつも聞いてるよ、ちゃんと。それとも毎度あんたの望む答えが欲しいのか?」
「そういう訳じゃない」
「あんな苦く煮出してるのにいつもの様にクリーム入りのコーヒーを飲んでない。それがあんたの幸せなら俺は構わない。だけど俺とのセックスは悪くなかっただろ?」
「私は彼らとの行為をそんな風に思っている訳じゃない」