第9章 Sketch3 --また冬に会おう※
雪が積もったその翌々朝。
その若い男は次なる家を探しに行った。
細い筋を割る様に雪道をいくその男の後ろ姿を窓際から見送る。
元の世界に帰れる女は滅多に居ない。
男の場合はそうでも無いが、別の意味で難しい。
そもそも閉じてしまった心を持った者を受け入れる、ここの住人の……いや、人の世界でも、そんなものは簡単に出来る事ではないのだ。
それでも私は願う。
彼らにひと握りの希望があるのなら。
前へ進む、そんな勇気を持つ者たちに。
「……もう戻って来ないのかと思っていたよ」
壁にもたれたままの私の背後から、もう聞き慣れた低音のよく響く声がした。
「何でだ? ……流石に冷える。飲み物を貰うよ」
キッチンに早足で入って来たケリーが身震いしながらコンロに火を付ける。
「私はここでの自分の行動を恥じた事は無い」
「いきなり何の告白だ? じゃ、俺もしようか。愛してるよゴーダ」