第9章 Sketch3 --また冬に会おう※
「ゴーダ、客だぜ」
私の代わりに玄関に出たケリーが知らせに来た。
うちに来る客の目的は大体決まっている。
「録でも無さそうな奴なら追い返そうとしたんだがな」
「……余計な事はしなくていいよ」
リラといい、この間の男と言い。
普通は数年か数十年に一度だと言うのに。
「今年は来客が多い」
椅子の背もたれに引っ掛けていた膝掛けを羽織って玄関口で呟いた。
「あ、あの!ここの家が目に入りましたので……」
戸口には若い男が立っていた。
緊張しているのか慣れていないのか。
その男をじっと見てくんと鼻を動かすと男の顔が真っ赤になった。
後ろからケリーが私に話しかけてくる。
「話が長くなりそうか?」
「多分」
「じゃ、俺は二、三日町に行ってるよ。ついでに備蓄の買い出しも兼ねて」
ケリーは私とその男の脇をついと通り過ぎて外に出て行った。
それを何となく目で追っていると、若い男が話し始めた。
「僕は人の世界から来ました」
「……言わなくても匂いで分かるよ。私はゴーダ。家畜…失礼、羊か何か? こちらは犬族だが恐れなくていい。君の名前を教えてくれるかい?」