第9章 Sketch3 --また冬に会おう※
「……ッ痛う」
目覚めて起き上がろうとして、まず腰に痺れと脱力感を感じた。
その分腿に重心を置こうとするとこちらは激しい筋肉痛。
肩も、……体中がミシミシと音を立てているようだった。
体力に自信が無い方では無いのだが、昨晩はこっぴどくやられ過ぎたらしい。
普通にやるこれはこんなにハードなものだったろうか。
「おはよう、ゴーダ。水汲みだとか朝の家事は一通りやっといた。体が辛いだろ? ここで一緒に飯を食おう」
誰のせいだと思ってる。
パンや卵が乗せられているトレイをベッドのサイドテーブルに配するケリーを恨めしげに見た。
そんな私の視線に気付いた彼が悪びれもなく口を開く。
「優しい女程、やった後にダメージが残る。だから再三何も考えるなと忠告したろう。今日は休んでるといい、予定があったなら俺に指示だけくれればいいから」
何となく気付いてはいたが、ケリーは有能な男だった。
力仕事や家事のみと言わず、頭も切れてここの周囲の人間と打ち解けるのもあっという間だった。
それからこれは意外だったが最初の夜以来、彼が私を抱く事は無かった。
二ヶ月後には素材の良さも相まって良い値で売れそうなチェス盤と駒を作り上げ、吹雪の日などは二人でそれに興じ楽しんだ。
音楽を流してただ酒を愉む夜もある。