第9章 Sketch3 --また冬に会おう※
彼の指先にまた新たな私の体液が絡み付く。
「さっさと…こんなの、もういいだろう……」
「丸刀は寝かせて浅く表面を削ると柔らかに仕上がるが、深く彫り込むと表情が出る。ゴーダ、あんたはどっちが好みだ?」
「………何の、話だ」
「何十分なんて言わない。ホンの数時間程だ」
「……待て」
思わず後ろを振り返った私に、ケリーは口角を上げその鋭い瞳を和らげて見詰めてきた。
「そうしょっちゅうはしないよ。あんたの仕事にも障る。言ったろ?宝石の様に扱うと」
「ちょっと待て」
「気にするな。ただ確かめたいだけだ」
何をだ、そう言おうとする口だけがぱくぱくと動き、音に変換する前に私は諦めた。
やはりこいつが商売をしているなんて信じられない。
色々教えてくれて感謝する。そう礼を言いながら覆い被さってくる体。
……肌に刺さる様な、焼かれる様な、これはいつもの体の繋がりの一種なのか?
「何も考えるな」
ただ喘ぎ続ける私の耳許でケリーは繰り返し囁いた。
今晩は何も視なくて済むらしい、私はそれだけ理解した。