第6章 Sketch2 --解呪
それを手のひらに乗せ、それから指でつまんで灯りにかざしてしばらく観察していたダリルは一瞬眉をひそめ、ミーシャに向き直った。
「こんなものをどこで? これはミーシャ、誰でも一朝一夕に作れるわけじゃないし、とても良くない物だよ。 禍々しく、淫の力に満ちている」
何の情報もなくこんな小指の爪先にも満たないものでも判別が出来るお父さんはやっぱり凄い、とミーシャは思った。
淡い期待を持って更に訊いてみた。
「悪いものを取り除く事は出来ないの?」
「出来ない事もないが……これは何かの破片みたいだが。 残りも全て揃っているのかい?」
「……多分、まだあると思うんだけど」
まさか自分の中に、とは言えない。
ダリルが頬骨に指沿わせそれを抑える様にして注意深く口を開いた。
「もし揃ったならまた話に来なさい。 私の専門外ではあるが、清めて月の浄化を借りれば何とかなるかもしれない」
「揃わなきゃ駄目なの?」
「ここまで本来の形が損なわれていてはね。 それまでこんなものは傍に置かない事だよ。 何ならお父さんが預かっておこうか?」
「…………」
毎朝。
その効力を失ったのか少しずつ少しずつ、これは私から出ていく。
揃えるには、あとどれだけかかるんだろう。
何度、夢を見ればいいんだろう?
とても自分にはそれを待てるとは思えなかった。
────いっそ、話してしまおうか
そしたらお父さんは、私とお兄ちゃんのどちらを信じる?