第2章 Sketch1 --莉奈
月明かりが彼女を照らします。
ただその横顔は、生命に溢れた莉奈の表情は、実に複雑な陰影と色彩に充ち、私は尊く美しいと思ってしまうのです。
「今晩は随分と感じてるんじゃないですか?」
約200CCの彼女の血液を頂戴した私はちゅぽ、と彼女から歯を抜きました。
すっかり最初の腫れが引いた彼女の肌には、二つの穴が空いていますが、それをまた舐めとるとまず血が止まり、次いで一時間もすれば傷が塞がります。
口を効けず、力無くおののくだけの彼女の体は、ぐったりと私にもたれかかり、相変わらず私を見ずに、唇だけが微かに発声をぱくぱくと試みます。
『レニー……抱いて』
いつもならば聞こえない振りをすればいいだけです。
実際、彼女も私が聞こえていないと思っているのでしょう。
私は彼女の体の下に腕を入れ、ベッドの端に座らせました。
「……莉奈、それは駄目です」
彼女は私を見ました。
頬も瞳の縁も赤く染まったその顔で、私を見詰めました。
そして今度は私が目を逸らします。
なぜ、私たち二人は目線を外し合うのでしょうか。