第2章 Sketch1 --莉奈
本来的に、私の麻酔の役目を果たす睡液や、媚薬といったものは、あくまで食事のために存在するものです。
性欲に限れば勿論同種とはいえ、色んな性格の者が居ます。
同種の女性に拘る者、人との交わりを好む者、その中でも生娘を好む者、果ては私たち眷族になり損ねたモロイ(ゾンビの意)なんて者を好む者もいます。
『人なんてゲイやアナルセックス、果てはペドフィリア(小児性愛)や獣姦まであるんですから、私たちなんてまだ可愛いものですよ』
以前にそう言うと、莉奈は不思議そうな表情をしていましたが、その次に会った時はそのそれぞれの意味を調べたのか、心底変態でも見る様な目付きで私を見てきて、随分と理不尽な思いをしたものです。
そんな私が、この受精卵未満の礼儀知らずな女性に対し、どう思っているかは複雑です。
その体質や迂闊さのために、放っておけない娘の様でもあり。
人ではない私を、全く恐れない彼女に違和感を感じ。
私にとっては捕食者であるにも関わらず、莉奈からすれば私がヒーラーでもある関係性はたぐいまれで。
莉奈は体質や境遇のせいで、私は一族の慣習のせいで、孤独というものに慣れた同士でもあります。
そしてこうやって快楽に我を忘れて涎を垂らし、犬のように浅い呼吸を繰り返す莉奈を見ていると、もう一つ別の欲も湧いてくるのです。
秀でた額に汗を浮かばせ、紅く柔らかそうな粘膜からは息苦しいのか、それとも熱を逃がそうとしているのかは、分かりません。
それよりも紅の小さな舌を出して。
伏し目がちな瞳は情欲に濡れ、そんな時、莉奈はいつも私を見ようとしません。