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僕と彼女の声帯心理戦争

第4章 【第1章】嵐の前の静けさ Day2


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「……葵」

石像パズルの洞窟からある程度離れた地点。
森の中をふんふん歩く彼女ーー葵が振り返った。

「羽京君だ~。監視お疲れ様です~」ビシいっ!と敬礼する笑顔の彼女。
それを険しい目で見詰めた。
「……君は、何がしたいんだ?」直球の質問だった。どうせ、はぐらかされるだけかもしれない。

「何って……策謀ですな~」
「策謀、ね……」

割と真面目な回答が返ってきた。しかも物騒なワードで。…これは、追求するチャンスかも知れない。

「そうですよ~。司帝国のトップ3は皆さん上から司君、氷月、羽京君で合ってますよね~?」
「……まあ、そう言われてるね」微かに笑う。自分にはそこまでの実力は無いつもりだが。……ん?

「……ねえ、待って」「どうかしました?」
「……どうして氷月だけ、『君』付けじゃないのかな?」

そう言うと、そうですね~と彼女が少し考え込んだ。
慎重に、言葉を選ぶ様に言う。

「あんな人、君付けする必要性も無いので」
「え……」

そう言うと、くるりと身を翻す。
ーーこれ以上、質問に答えてくれる気は無さそうだ。諦めて、先程の回答について考えを巡らせる。

『あんな人』と言うからには、氷月の人となりをよく知った上で、蔑む様な言葉を吐いたのだろう。……つまり、現代の時点で、彼女と氷月の間に何かしらの縁があり、出逢っていた可能性。
それも、かなり深い縁があったと言うこと。

……あの無駄口を叩かない、余計な事を話さない氷月の人となりを知る?

自分ですら『氷月は何処か危うい』とは感じていた。だが、彼女は恐らく確信を持ってそれを感じ取っているのだろう。

ある意味彼女を知る大収穫ではあるが、反面謎が更に深まる様な答えだった。
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