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僕と彼女の声帯心理戦争

第4章 【第1章】嵐の前の静けさ Day2


そういうことだよ、と安心させる様にふんわり葵が笑う。

「そっか…羽京君も…」「彼は良い人だよ」「え」

思わず自分もえっ、と心の中で声が出た。

「だって、司帝国の人に比べたら、ずっとマトモだよ。司帝国の人達は司君の石像破壊を止めない人ばっかりなのに、杠ちゃんの頑張りを黙ってそっとしてるんだから。大丈夫」
「そうかな…?……葵ちゃんが言うなら、そうだね!」杠が笑う。

「……なんか葵ちゃん、その…今すごく落ち着いててオトナっぽいね?」

あはは、と彼女が笑う。
「これでもとっくに成人済みの大人だからね~。司君が19歳だっけ?私より数個下だよ」
「えっ」
「大学生くらいに見える?」ふふ、と葵が大人びた余裕の笑顔を見せる。

「うんうんっ…!!」頷く杠。
「ところがどっこい、もう卒業してるんだな~」
「わお!!」驚く杠。

「あと既婚者」
「わお」
「まあ今は未亡人」
「わぁお…!?」

「ふふっ、杠ちゃんはよく驚くね~?」
「あはは、なんかあんまりこう…年齢とか、離れてる感じに見えなくて」「そう見える様にしてるからね~」
淡々と彼女が返す。話している間も作業スピードは落ちない。

「……その、いつも敢えてそういう風にしてるの?」「まぁね。その方がやりやすいし。……私は基本演技をしてる時が通常運転みたいなものだから、特に苦痛ではないかな」

「あっ、でも…!」「?」「もし……また今日みたいに手伝ってくれる時は…今みたいな葵ちゃんが見たいな~なんて」えへへ、と笑う杠。

「いいよ。また石像パズル手伝いに来るね」
そう葵が微笑む。私も普段から破片集めて持ってきたりしようか?等と提案したりしている。

(……本気で、手伝うつもりなのかな)

正直、自分としては杠のやっている事を黙っていてくれるなら、有難い。
自分は司帝国のやっている事が疑問だしーー
……何より、今後の科学王国との戦争に、自分も動員される未来が見えて、嫌だった。

人が死ぬのは、見たくない。
ましてや殺すなんて、したくない。

(彼女は、何がしたいんだろう)

そう思いながら、羽京は目の前でせっせと鬼のようなパズルに勤しむ二人の女性を見つめていた。
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